哲彦の指定した場所で、待ち合わせをしていた義人は、かすみの顔を見て驚いた。
「こんばんは」
「こんばんは…え…と君は確か哲彦の…知り合いだよね?えっと…かすみさんだったかな?」
「はい…遠藤かすみって言います。」
「もしかして、俺らが入った、カフェの…」
「そうです。」
「ああ…はじめまして。多分、哲との会話のなかに出てきてるかわからないけど、南山義人って言います。確か、東京は、初めてとか…」
義人がそう言うと、かすみの顔が曇った。
「あれ、俺なんか気にさわること言ったのかな?」
「あっ!いえ…そうじゃないんです。…私、謝らないといけないことがあって…」
「謝ること?どんなこと?」
「実は…実は、私、哲彦さんには、東京が初めてとゆうことに対して、謝罪したんです。…でも、今日、南山さんにお会いして、お話するにあたって、謝りたかったことがあって…」
「…もしかして、東京に来たことがあるってこと?」
「…そうです。ごめんなさい。」
そう言って、謝るかすみの姿に、義人は申し訳なさを感じた。
(きっと、この人は、俺に話したいことがあって、スケジュールの中に組み入れてくれてたんだろう。そんな小さなことで、謝ることなんてないのに…)
「あの…そんなこと、別に気にしてないし、…その、遠藤さんにも事情があったんでしょ?…それに、そんなことで謝ってもらうなんて…俺、そんな偉い人間じゃないよ。俺は、イケてない、ただのお人好しおじさんだから(笑)」
そう言って、笑顔を見せる義人に、かすみは安心した。
(ああ…想像した通り、この人は優しい人なんだな…哲彦さんとは違う形かもしれないけど…)
かすみにとって、東京は、友人との思い出もあれば、かつて、恋愛で嫌な思いをした場所でもあった。
楽しいことの方が少ないと言った方が正しいのだが…
「あの…今日は、時間を作ってもらってありがとうございます」
「こちらこそ。かすみさんみたいな、素敵な女性と、お話が出来て、俺は幸せですよ。…あ、100パーセント本音ですよ(笑)」
そう言って、笑顔で話す義人とかすみは、食事がてら、近くのファミレスに向かった。