隆「…なあ、慶太郎、」
隆一が何か思い出したように口を開いた
隆「…例えば、スポーツ選手とかで成功する人って、弟や妹が多いって思ったことないか…?」
慶「?」
隆「きっと、兄や姉を真似て始めて、抜かしたい目標も自分より年上の兄弟やから上達早くなるんやろなあ」
慶「…」
隆「…光希もそうやった。実はな、先にピアノ始めたのは俺やってん」
慶「そうなん?」
隆「そう。そしたらあいつもやりたいって言い出して…先に始めた俺を抜かそうとめっちゃ頑張ってたわ。ほんまに楽しそうに…で、あっという間に抜かしてさ、まあ俺は元々嫌いやからすぐ辞めちゃって…でもあいつは辞めんかった。ずっと続けてどんどん上手くなって…皆があいつに期待してた。あいつもそれにこたえて、どんどん…でも、いつの間にか、楽しさなんか忘れたんやろな。期待に応えることが、目的になってしまってたんやろな」
慶太郎は隆一の横顔をじっと見つめ、彼の話に集中していた
隆「話しすぎやな。これ以上言うと怒るな、光希」
慶「?」
隆「もし気になるなら、本人に直接聞いてやってよ。俺はこれ以上言えへん。でも、あいつは誰かに吐くべきや。自分が抱えてるもんを…」