航宙機動部隊第四章・2

まっかつ  2010-04-04投稿
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パレオス星邦首都星ティヴィタヴェキア周回軌道上・最外縁征討軍旗艦《D=カーネギー》―\r
連合艦隊指令長官執務室前は二人の衛兵が左右を守るのが常だったが、リク=ウル=カルンダハラがそこに到着した時には更に三人目が扉からやや離れた廊下際に背中を預け、こちらを眺めていた。
一目その姿を視認して誰だか分からない程リクは無知では無かったし、また対象とすべき相手は無名でも無かった。
星間軌道公社・エンリケ特務調査官―\r
それはこの銀河に序列と言う物があるのならば、明らかに尊敬と畏怖に値する肩書きの持ち主であったのだ。
『やりあうつもりかね?太子党と』
少年の躊躇い勝ちな挨拶を受ける前に、腕を組ながらエンリケは先手を打って来た。
相変わらず傲岸にして不敵・気遣いも配慮も削り落とすだけ削り落とされた態度にして口調であり、当然ながら今だ感性にナイーブさを残している若き共和国宙邦総領事が好感を抱くには絶望的ではあったが、これがいつもの彼であり、フーバー=エンジェルミ等と違って取り分け少年を見下している のでは無かった。
『今更あんな連中が悔い改める筈も無いし、今頃になって誰かが手や口を出した所でどうにかなる状況でも無いと思うがな』
両手を左右に振りながら今度はきざったらしく両足を交差さして、ユニバーサルエリートは悠然と批評して見せた。
『特務調査官殿はそう言った事に反対なのですか?』
リクの声色と眼光はやや棘を帯びた物となった。
好悪だけで選べと言われれば、やはりこの人とは友達になれそうにない。
『さあな』
エンリケはそっぽを向いて見せた。
『私には後押しする義理も無ければ妨害する権限もない―どちら側に付いた所で結果はバランスの偏りにつながる』
『バランス?』
『そう、バランスだ』
相手は軽く頷いてから、
『この辺境に置ける宙際政治の均衡、合衆国陣営内の調和、ただでさえ崩壊途上にあるそれをだ。例えば君の右手にあるジュラルミン=ケース何かがどちら側へ傾けてしまうのか、それを気にするのが私の仕事だからな』
途端、リクは真っ赤になり両手でケースを胸の前に持ち直した。
『ここここ、これに何の用が!?』
『さあな―まあこれ以上君の外交官特権にとやかく言うつもりもなし、私はもう行くよ』
片手を上げた後姿となってエンリケはゆっくりと立ち去った。



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