天使のすむ湖23 岬の退院

雪美  2006-08-23投稿
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 そう、俺の決意とは、まずは香里を看取りそこまでは、香里に集中させてもらうことと、看取りが済んだらまた岬と共にすごしたいと思っていた。
都合がいい話だけど、二人が俺を必要としていることは、今回のことでよくわかったからだ、悩んで出した答えで、いまだにこれでいいかどうかはわからないけれど・・・



 その次の週、俺が自宅に戻ると、母から呼び止められ、母は眉間にしわを寄せ、怒り気味のことが伺われる。
即座にリビングに座らされた。
「変な噂を聞いたんだけど、一樹、あんたが岬ちゃんを振ったから拒食症で入院したって本当なの?」
「本当だよ、」
さらに母の怒りは増したようで、テーブルをバンと手のひらでたたくと、
「他に彼女が出来たって聞いたんだけど、それも本当なの?」
「本当だよ、俺は二人とも好きなんだ、母さんにはわかんないだろうけど、どっちも選べないくらいなー」
今度はくるりと背を母は向けた。
「そんないい加減な事言って、一人で二人も幸せに出来ないし、責任もてないでしょう。」
また落ち着きなく、俺を真顔で見た。
「年上の未亡人ってのも本当なのねー」
「どっから聞いたか知らないけど、残念ながら本当だよー三十過ぎの未亡人で目が覚めるような美人だよ。」
母は頭を抱えて続けた。
「別れなさい、その未亡人とは、あなたはまだ高校生なのよ、騙されてるのよ。」
今度は俺がテーブルをたたいて、
「俺は真剣だよ、騙されてもいないし、今は彼女は脳腫瘍で一、二年しか残された時間はないんだ。そんな彼女を俺は一人ぼっちになんて出来ないし、幸せかどうかわからないけど、岬にも彼女にも俺が責任を持つよ、心配しないで母さん、元はといえば俺のまいた種だから。」
母は考え込んでしまった。
「そんな将来もない人と、岬ちゃんに合わせる顔がないじゃない、あんたはなんて事してくれたのよ、母さんは情けないよ。」
母は泣いていた。
そこへ、いるはずのない岬がドアを押して入ってきた。
「ごめんなさい、ドアが開いてたから今退院してきたのよ。」
驚いて言葉に詰まると、
「聞こえちゃったの、おばさん心配しないで、彼女を支える一樹を私が更に支えるから、そうしてもいいよね。一樹・・・」
その岬の決意に俺は驚きを隠せなかった。







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