階段をかけあがり、いつものように修二を起こしに悠は修二の部屋にやってきた。
「修二〜起きろ〜。遅刻す…」
ガチャッ。
「わかってるよ。」
悠は驚きながら言う。
「修二が起こす前から起きてるなんて。」
「まるでいつも起きてないかのような言い方だな。」
「起きてないじゃん。」
「うるせぇ。」
修二はそういいながら洗面所に向かった。
洗面所には父さんがいた。「おはよう。」
「おぅ。」
会話はそれだけ。
あとは黙々と歯を磨いたり、顔を洗ったり。
父さんはあの大会の日のことを会話には出さない。
恥ずかしいのかどうかは知らないが、会話に出ないなら出ないで修二にはべつによかった。
「行ってくる。」
「おぅ。あぁそうだ。」
「なに?」
「今ごろ言うのも変やけどな…。」
「だからなに?」
父さんが含み笑いをしながら言う。
「優勢も一本も、同じ敗けなら変わらんで。」
「うるせぇ!!」
そのままリビングを通って玄関に向かう。
「行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
母さんの返答を聞きながら玄関の戸を開けて家を出た。
なんだよ。
二日目も見てたのかよ。
そう考えながら、悠と一緒に家を出た。