その顔は、子供だった。
生意気な言葉を吐く様な子ではなかった、少し前の素直なユウの顔に戻っていた。
ユウの口から、全てを知ってしまった以上、
親として、このまま黙っては、おけない。
子供同士の問題に、下手に親がしゃしゃり出ると、かえって厄介な事になる。
しかし、ユウの場合、金銭を要求されるなど、
決して、放っておける問題ではない。
ユウのイジメを受けている姿と、
自分が会社を辞めるまでの間、
上司やパートのババァ共から受けた、
屈辱的な言動や行動が重なった。
事なかれ主義の教師らに訴えても、
簡単に解決出来る問題ではないと思ったが、
やはり、これは担任の教師には報告するべきであろう。
『ユウ。
よく父さんに話してくれたな。
父さん、この事について、考えがあるから、
家で母さんに傷の手当てをしてもらったら、
今日は早く寝なさい。
明日は学校を休め。
学校へは、父さんから連絡しておくから。』
コクンとうなずく我が子の顔は、
頼りない父親の言葉にも、
少し、安心したかの様に見えた。
具体的な解決策がひらめいた訳でもないのに、
俺の心のわだかまりは、
なぜか今夜、
突然消える事となったのだった。