――ザシュッ
(何だ…?)
――ズパッ
(…おかしい)
人を斬り倒していく中、水鶴は己の異常に気がつきだした。
(…いつもより…深く斬れていない…?)
そう。
水鶴は、いつも相手の息の根が完全にとまるであろう深さまで斬るはずだが、今日は斬れていない気がする。
斬る寸前に、刀を握る手を無意識に緩めてしまうのだ。
「ちッ!!」
自分への苛立ちを刀に込め、水鶴は半分ヤケになって刃を振り回す。
「頼むッ、見逃してくれ…!!俺が死んだら、妹が一人になっちまう…!!」
皆神の兵の一人が、水鶴に懇願した。年は18〜19くらいであろう、その青年の前で、水鶴はピタリと動きを止めた。
「頼む…!!たった一人の…家族なんだ…!」
「…かぞく」
水鶴は復唱する。
「…水鶴…様…!?」
圭が隣で皆神の兵を薙ぎ倒しながら、水鶴の異常に気づいた。
(皆神の兵の前で…何故立ち尽くして…いる?)
「…水鶴様!?」
圭が水鶴に呼びかけると、水鶴はハッとする。
「…違う…」
そしてポツリと呟いた。
「え?」
青年がビクリと体を震わせた。
「初めから…戦いに出なければいいだろう」
「…ッ!!…やめてくれ、頼むから…!!」
「…知ったことか」
――ザクッ
水鶴は、青年の首に剣を刺した。引き抜くのが、いつもより重く感じた。
辺りの皆神の兵は、水鶴が呆けている間 圭が一蹴してしまっていた。
「水鶴…様…」
圭が迅速に水鶴の下へ駆け寄った。
「柊」
「はい」
「私とは、何だ…?」