「…?」
質問の意味がわからず、圭は黙った。
「私は…父上に造られた殺人鬼だ」
「……」
「ならば何故 晶の偽善的な言葉が耳に残る?」
水鶴は地に膝をついた。
「私はどこか おかしくなったのか…!?
人を殺すのに躊躇いが出る…
相手の言い分に同情する…
私は…私は…!!
このままでは…殺人鬼ではなくなってしまう…
…要らない存在になってしまう…!!」
水鶴は混乱している様子だった。不安な気持ちが脳内を占めているのであろう。額に手を当て、頭痛でもするのか、歯を食いしばっている。
「違い…ます…!!」
口調は相変わらずの途切れ途切れで、圭が言葉を紡いだ。
「水鶴様が要らない存在になるなら…ば…。
俺の存在理由も消え…ます…。
水鶴様の存在が俺の存在理由…です。
ですからどうか要らないなどと言わないで下さ…い…」
「柊…」
水鶴は顔をあげた。
圭の顔が少し悲痛そうに歪んでいたのが見えた。
――ぎゅうっ
「!?」
圭は目を丸くした。
何故なら水鶴が圭の左腕、つまり鎌のついている方の腕を掴んだからだ。
「お前を縛りつけたのは私だ…」
俯いたまま、腕を持つ手の力を込めて水鶴が言った。
「違い…ます」
圭は かぶりを振って否定した。
「鎖でつないでしまったのは私だ…」
「…いいえ」
「私は何なんだ…?」
「水鶴様は水鶴様で…す」
ポツリ、ポツリ…。
二人は消えてしまいそうなくらい小さな声で、言の葉を交わす。
「柊、ありがとう…」
「水鶴様、それは俺の言葉…です」
「これからも…隣にいてくれるか?」
「勿論…です」
口約束を交わし、二人は戦場へ進んでいった。