二人で過ごした小さな部屋を
見ないように通り過ぎ
隠れるように空を見る
細い道路から見える坂道を二人で歩いたり
買い物をしたり
飲みに行ったことも
まるで解けない魔法のように
くるくると私を縛る
周りの風景は何も変わらず
記憶だけはいつまでも夏のまま
暑い日にバイクで二人乗りして出かけたことも
風邪をひいた貴女を狭いロフトでしか休ませられなかったことも
そんな貴女へほくほくのたまごを入れた粥を作ったことも
まるで解けない魔法のように
くるくるくるくると私を縛る
最後に作ってくれたカレーをすべて食べれば良かったのに
喉を通らずに傷めてしまいました。
いつの間にか増えた貴女の物を片付けなくてはいけないのに
何も手につかずにアルバムだけをめくるだけ
あれから何年も経ったけど
記憶はいつでも鮮明に色をつけたまま
くるくると私を縛る鎖のように
両手と記憶を拘束している
周りの風景は何も変わらず
記憶だけはいつまでも夏のまま
消えない記憶は
消せない記憶となって
私の手足を拘束している