alone 44=無想だな=

兼古 朝知  2010-04-10投稿
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「よっ、早いじゃん」

あの林のあの場所周辺を訪れると、水鶴が圭を従えて立っていた。
晶は にこやかな笑みを浮かべ、手を挙げた。

圭は晶をギロリと睨んだ。見知らぬ客に威嚇をする番犬のように。
水鶴は「あぁ」と小さく返事をするのみだった。

三人とも雨に濡れ、髪の先や指先などから雨粒を滴らせていた。

水鶴が口を開いた。

「安心しろ。柊はお前に手を出さない。たとえ私が死のうとな…」

水鶴が ちらと圭に目をやると、今まで殺気を放っていた圭は 嘘のようにペコリと水鶴に頭を下げた。

「どっちかが死ぬまで…やりあうのかよ?」

晶が苦々しい表情で尋ねると、水鶴は「当たり前だろう」と答えた。

「敵同士殺しあいをしないなどは甘い考えだ」

フンと鼻をならして水鶴が そう言うと、晶は雨に濡れて鬱陶しくなった前髪をかき上げて言った。

「…ハッ、甘くて結構!俺は他人を殺すのが嫌いだからな」

「流石は自神宗陣内で有名な優男だな、晶」

右の横髪を耳にかけ、水鶴は言った。

「ヤサオトコだぁ?」

片眉を上げて晶が聞き返す。すると水鶴の代わりに圭が口を開く。

「自神の兵で
お前に遭遇した者は
皆生きて帰ってき…た。
どんな傷を
負っていて…も…。
…とんだ優男…だな。
俺たちには
いい迷惑…だ…。
そいつらはお前を恐れて
戦わなく
なるのだから…な」

圭は忌々しげに舌打ちをする。彼は晶や水鶴のように髪をどけることはなく、長い前髪の隙間から晶を睨んでいた。

「そんなら戦わなきゃいいじゃん?」

晶は平然とそう言ってのけた。

「俺は この戦いをさっさと終わってほしいって思ってるしな」

――キィンッ!!

晶の言った直後、鋭い金属音が辺りに響いた。

水鶴が晶に斬りかかり、晶がその剣を己の剣で受け止めたのだ。

「無想だな…晶」

「あァ…?」

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