「本物のサインだな。よし、賞金の百五十ガリオンと証明書を発行しよう」
ワイズは確認を終えると、カウンターの奥にある金庫に向かった。
「はあー…」
ザックは大きく息を吐いて、脱力した。
「悩みましたか?」
いつの間にか隣に立っていたエナンが気の毒そうな顔で、ルークに尋ねた。
「…」
ザックは黙って頷いた。
「私も時々、『これでいいのか?』と悩む事があります。それでも、仲間は裏切れないんですよね」
「エナンさん…」
「ほい、お待ちどうさん!」
ワイズはカウンターの上に賞金が入った袋と一枚の紙を置いた。
「ありがとうございます」
ザックは礼を言って、小さく頭を下げた。
「…知り合いか?」
ワイズは不思議そうな顔で、エナンを指差した。
「あ…え、と…」
「ザックさんの友人のエナンと言います。今日は彼の付き添いという形でここに来ました」
思わず口ごもってしまったザックを援助するような形で、エナンは流れるような口調で自己紹介した。
「付き添いねえ…」
ワイズは眉を僅かに上げて、エナンをまじまじと見つめた。
エナンはそれを気にしたような素振りを見せずに、
「エルム村で彼と会いましてね。それで色々と話しをしているうちに打ち解け合って友人になったんです」
と、友人になった経緯を説明した。
「なるほどね」
ワイズは納得したように頷いたが、目は油断なくエナンを見ていた。
「ザックさん、次の仕事はどうするんですか?」