晶がギリギリと音を立てながら鍔ぜり合いをしつつ、水鶴を見る。
水鶴は続けた。
「ただ戦争が嫌だ嫌だと訴えるだけで…平和ばかり主張する。お前の主張は具体性が無さすぎる」
「具体性ならある!!」
晶は堂々と反論した。
「!…ふん、ならば言ってみろ」
水鶴は意外そうに目を丸くしたが、すぐに元の温度の無い顔に戻って言った。
晶は胸を張って言った。
「お前や圭や夕や皆が!!笑っていられるならそれが俺の平和だ!!」
そして大きく後ろに飛びのき、晶は鍔ぜり合いから体勢を戻した。
「…れが…」
水鶴がキッと晶を睨み、強い口調で言った。
「それが無想だと言っている!!お前みたいに他人を殺したくないだの、笑えることが平和だの抜かす、お門違いの暗愚は死んでしまえ!!」
――ジッ!!
水鶴の突き出した剣は、晶の左肩を掠め、浅い傷を負わせた。
「何でだよ!!戦いばっかのこの世の中で…平和を願っちゃいけない理由でもあんのかよ!?」
「戦うことが兵の生きる手段だ!!
そうだろう!?
何を犠牲にしても!!
互いの教祖の為に戦うのが兵の義務だろう!!
違うか晶!?」
「違うッ…違う!!」
――ギャギィッ!!
――キンッ!
晶は水鶴の攻撃をひたすらに防ぎながら、精一杯に叫んだ。水鶴の心に届くように…。
「俺だって戦争は仕方ねぇってこの前まで思ってた!!でも違う、違うんだよ!!」
「何が違う!?
平和がある限り戦争は無くならない!!
戦争が大きければ大きいほど後に訪れる平和は大きい!!
父上は…私たちの教祖はそこまで考えての事だ!!
戦争は…戦争は仕方のないものだ!!」
「!!」
晶は水鶴の言葉に反応した。
水鶴は、今 確かに「戦争は仕方の無いもの」と言った。
今の水鶴の言葉に偽りがないとすれば。本心で言ったとするならば。
(水鶴だって…戦争をしたくないのか…!?)
わずかに漏れ出した、かつての親友の本音。
(まだ水鶴を救える…!!)
晶は、その可能性を見つけだしたのだった。