alone 46=届かない声=

兼古 朝知  2010-04-11投稿
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「お前もしかしてッ…」

晶が言いかけたときだった。

――タンッ

晶の後方から銃弾が飛び、水鶴の左頬を掠めた。
水鶴の頬に赤い線が入り、微量ながら血が流れる。

「な…!?」

突然の事に戸惑いつつ、晶が銃弾の軌道を目線で辿ると、銃器や刃物を携えた、大勢の皆神宗信者がいた。

「晶君ッ、大丈夫か!?」

「中村と柊がいるぞ!!」

「撃て!!撃ち殺せ!!」

信者たちが辺りにわめき散らし、より多くの皆神宗信者が集まる。

「水鶴様、殺(や)ってもよろしい…ので?」

圭が水鶴に駆け寄り、耳打ちするかのように話しかける。

「あぁ…殺(や)れ」

水鶴は何事もなかったかのように頬の血を拭い、冷酷な目つきで言った。

「ま、待ってくれよ!!おっちゃんたちも、水鶴も圭も!!」

晶の訴えも虚しく…。

――パララララッ!!

皆神の兵は機関銃を放った。瞬間、機関銃を持っていた兵の両腕が、圭によって音も無く斬り落とされた。

水鶴は軽く左に避け、その弾丸を受けることはなかった。

「晶君、我々がこいつらに今まで何人殺したと思ってる!?甘い考えは捨てなさい!」

皆神の兵の一人が言う。

「山口…晶。これは正当防衛…だ。残念ながら交渉不成立だ…な」

顔や服を敵の血で濡らす圭が言った。


「ぐあぁぁあ!!」

「死ねぇえ自神の狂信者が!!」

「やめッ、助ッけ…!!」

「う゛ぁああああ!!」


辺りで、喧騒と断末魔がこだまする。
晶は、呆然とその光景を見ていた。

「やめろよ…」

呟く、晶。

――ドドドドッ!!

――ザクッ!!

――ドシュッ、グシャ!!

「やめろ…」

晶の声は…
誰にも届かない。



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