「もぉやめてくれよ!!」
晶が声を張り上げた時だった。
――ヒュンッ
圭は目の端に、3方向から水鶴に向かって飛ぶ矢を捉えた。
3方向からの矢は、いかに水鶴と言えど一人ではどうにも出来ない。
考えるより早く、体が先に動いた。
――ドスドスドス…ッ
「…柊?」
水鶴が、圭の名前を呼んだ。
圭は水鶴に覆い被さるような状態で、水鶴の盾になっていた。
圭の背には、放たれた3本の矢が刺さっている。
「……ッ」
圭は、黙って背の焼けるような痛みに耐えた。
「いつかの晶の真似事か、柊…?」
水鶴は圭を鋭い目で見て、問うた。
「いい…え、俺の意志で…す」
ゆっくり、ゆっくり圭は立ち上がる。
皆神の兵たちは、背に矢が刺さったままな圭の行動に驚き、沈黙している。
「こんな傷…命に支障などきたしませ…ん」
「そうか…」
水鶴も立ち上がり、圭に背を向けた。
「晶、続きといくか」
水鶴は晶に呼びかけた。
「まッ、待てよ!圭はあのままかよ!?なんにもしてやんねーのかよ!?」
晶が言うと、水鶴は圭の方をちらりと見やり、目を閉じて言った。
「…柊が大事無いと言った。私が心配する程でもないだろう」
「せめて…圭を見守ってやれよ…!!水鶴、お前の従者だろ!?」
「……」
「なぁ…頼むよ…!!」
晶は声を絞り出すようにして言った。
「…わかった…」
しばらく間をあけて、水鶴は承諾した。
そして圭の方に向き直り、じっと彼を見つめる。
――タンッ!
「…ッ!!」
弾丸が圭の肩を貫いた。
圭は変わらず痛みに耐えるのみだ。
水鶴は眉をひそめた。
――ズパッ!!ドスッ!!
「……!」
脇腹の薄皮を斬られ、矢が膝上に刺さる。
圭はバランスを一瞬崩したものの、先程までと同様に斬りかかりにいっている。
水鶴の眼光が、少し鋭くなる。
晶は水鶴の表情と圭の様子を代わる代わる見て、やるせない思いに駆られる。
――ザクッ!!
「……ッあ…!!」
圭が攻撃を受け続ける中、初めて苦悶の声を出した。
右腕が。
鎌のついていない右腕が斬り落とされたのだ。
「!!…圭ッ…」
「柊!!!!」
晶より遥かに大きな声で叫んだのは。
紛れもない、水鶴だった。