試合の翌日から、一人で別メニューをこなしている光の姿があった。
別メニューと言っても肩が強い光は投げ込みはせず、ひたすら走り込みだった。
「来週から夏の甲子園予選大会が始まる。3年生にとっては最後の大会だ。気を引き締めていけ!!」
練習を終え、監督が皆に伝える。
それから大会の当日まで3年は死に物狂いで練習をこなした。もちろん光もだ。
そして大会が始まった。
真野先輩が復帰するのは2回戦からだ。
真野先輩のためにも1回戦で負けるわけにはいかない。
先発は藤沢先輩。6回からは光が投げ、3対1で勝利した。2回戦からは真野先輩が登板した。失点もあったが、昂南打線がヒットを量産し順調に勝ち進んだ。
そして遂に決勝まで勝ち進んだ。恐ろしい事に光にはまだ失点がない。それが光の自信になり、力になっていた。
「光!」
武司が練習を終え、帰ろうとしている光に声をかけた。
「いよいよ決勝戦だ。今度の相手の去年の大会での戦績を知ってるか?」
「いや知らないけど・・」
「甲子園の2回戦までいったんだ。打撃力がウチと比にならないんだよ!正直、シュートだけじゃあ勝てない」
「どんな変化球がいいと思う?」
「ああ。変化が大きいカーブにしよう。緩急もつくからな」
光は頷くとグローブとボールを持ってブルペンへ向かった。
試合は明後日だ。今の光には一分でも時間が惜しかった。