慶「誰?」
女性が去った後、慶太郎が率直に聞いた。
光「…先生、ピアノの。前に教わってたの」
慶「なんで今はちゃうん?」
光「…」
慶「光希…なんでピアノ弾かないん?」
二人はそのままそばの公園に立ち寄り、ベンチに座った。空はすでに月が浮かび、人影は全くない。
光「…聞いてくれる?」
慶「うん」
光「特に…たいした理由はないねん。ただ…うちは逃げた。」
慶「逃げた?」
光「そう。…1年間の留学はピアノのため。留学…とは違うかな。私ね、これでもピアノで有名やって、日本で腕を認められて、あっちでコンクールにでるためにパリに飛んだ。他にもウィーンだとかいろんな地域に飛んで、コンクールに演奏会…休む暇もないほど活動してた。周りに実力を認められて、どんどん上を目指してた。でも…」
慶「…?」