光「…ずっと順調に、完璧にやってた。コンクールでは賞をもらって、演奏会にでれば周りの評価はいつも素晴らしいもので…周りの期待はどんどん増えていった。友達なんか作ってる暇、なかったけど…ファンまでおってんで?演奏会のたびに知らない人から貰うねん。花束にぬいぐるみにお菓子…いろんな人が私に言うねん。“とても素敵な演奏だった”“素晴らしかった”。…でも気付いたらそんなプレゼントや言葉じゃ救われなくなった。日に日に増えるのは周りの期待。それに対して時間はなくなっていって…あっちじゃ友達一人できない。何処に行っても何時でもピアノだけ。そんなことばかり考えるようになった頃…その頃に出たコンクールが駄目やってん…」
慶「駄目…?」
光「賞一つもらえなかった。評価も酷かった。その後の演奏会の評価も…私は裏切り者にされた。期待ハズレだって。プレゼントはあっても前みたいな言葉は貰えなかった。私のピアノは誰一人、笑顔にできなかった。それで…辞めちゃった。やる気なくしちゃった」
慶「…」
光「目の前にあったチャンスや希望は、普通の人じゃなかなか手に入らない物。それを私は簡単に投げ出した。そんなうちはアホやって思ってるやろ?」