「あの…」
ザックは袋と証明書を受け取りながら、ワイズに声を掛けた。
「何だ?」
「実はその、住み込みで働いていた所から収穫まで手伝ってほしいと言われまして…」
「…で、オーケーしてしまった…という事か」
ワイズは苦笑した。
「はい。だから収穫期が終わるまでは賞金稼ぎの仕事は中断したいんですが…」
「賞金稼ぎってのは商売じゃない。だから請ける請けないは個人の自由だ。気にしなくていいぞ」
「良かった」
ザックは安堵したような表情で、胸をなで下ろした。
「それより、連れはもう外に出て行ったぞ」
「え…あ!?」
先ほどまでザックの隣にいたエナンの姿は既に無かった。
「す、すいません。賞金ありがとうございました!」
ザックは慌ててワイズに礼を言いながら、急いで店の外に出て行った。
「あのガキ、やっぱり賞金稼ぎに向いて無かったみたいだな。もうやる気が無くなっているみたいだし」
ザックが初めて店に来た時にいた男がニヤリと笑って、カウンターまでやって来た。
「…いや、やる気が無くなった訳じゃないさ」
ワイズは首を横に振った。
―恐怖で支配している、といった感じでは無さそうだが…。
これもあいつの人生か。そう呟いて、彼はサインされた依頼書にもう一度目を向けた。
―関わるのも野暮ってもんか。
彼は一つ小さく頷きながら、その依頼書を引き出しの奥にしまった。