「随分と深い竪穴ですね、この底がシャンバラに繋がっているのですか?」
直径が五間(約9.1M)程もある竪穴を覗き込む半次郎。
底は暗く、どれだけの深さがあるか見当もつかない。
「簡単には辿り着けぬだろうが、繋がっているのは確かだ」
そうこたえると、ノアは周囲の地質を確認し始めた。
「厄介だな、二カ所同時に切り崩さなければ、これは塞げないな。
僅かにでも剣を入れるのがずれれば綺麗には塞げぬが、手を貸してくれるか?」
「承知しました」
半次郎の返事に小さくうなずくと、ノアは切り崩す地点へと移動した。
それに合わせて、半次郎も移動を始める。
指示をうけずに正確な切り崩し地点へと移動した半次郎に、ノアは口元を緩めていた。
「気を発動させて、ワタシの気に同調させろ。
そうすれば、ワタシが切り込む瞬間が判るはずだ」
「やってみます」
静かに気を発動させる半次郎。
その気は瞬く間に空間を支配し、ノアの気と同調した。
この地へ移動の途上、ノアは気についていくつかの講釈をおこなっていた。
本来、気というものは形而上的なものであるために、その理論はどうしても難解なものになってしまう。
にも関わらず、半次郎はその全てを理解し、己のものにしていた。