alone 49=ありがとう=

兼古 朝知  2010-04-15投稿
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「水鶴様、もう平気で…す。戦え…ます」

圭の言葉に、今まで呆けていた皆神の兵が身構えた。

「本当にか?」

水鶴が念を押して聞く。

「はい。…ただ――」

「何だ?」

「俺を残し…て、ここから離れていただけません…か…?」

「…!!」

水鶴は圭の胸中を察した。これだけ出血が酷いのだ。陣に連れ帰ったとしても、圭が助かる確率は非常に低い。

しかし…

「…駄目だ!!」

水鶴は首を盾には振らなかった。

「水鶴様、俺は…もう」

「言うな言うな!!ふざけるなよ!勝手に死ぬのは許さんぞ!!」

口調こそ強いものの、圭に すがるようにして言う姿は、ただの年相応の少女のようだった。

「どうして…」

そんな水鶴を見ながら、晶は そうこぼした。

「人を失う苦しみがお前にもあるなら、どうして…どうして人を簡単に殺せるんだ!?」

「……!!」

晶の問いに、水鶴は答えなかった。その代わりに、圭が口を開いた。

「黙…れ…!!」

ごほッと圭が咳を一つすると、多量の血が同時に吐かれた。

「げほっ…お前、に…ッ、お前に水鶴様の何がわか…る…!?」

息は荒く、どこからどう見ても死にかけの圭。

「水鶴様、行ってくださ…い」

「柊…私に命令する気か…?」

「申し訳ありませ…ん。しかし、お願いいたし…ます…ゴホッ」

圭は意思の強い目で水鶴を見る。

「…お前がいなかったら…私は、私は…!!」

「水鶴様…」

圭は、ゆっくり 諭すように言う。

「俺は…
この左手が鎌で良かったと思っていま…す。
だから…
この左手であなた様を護らせてくだ…さい。
あなた様が無事ならば…俺は幸せなんで…す」

「左手…」

「さぁ、水鶴…様」

圭は水鶴の背を優しく押した。

「あなた様に仕える事ができて…本当に良かったで…す。ありがとうございま…した、水鶴様」

振り返った水鶴に、圭は笑いかけた。
優しい笑みだった。

「柊…ありがとう、ありがとう…!!」

水鶴は頷き、走り去っていった。



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