いつもの二人きりの掃除時間。
「あっ・・・痛ぁっ・・・。」
ななが僕を見上げた。
どうやら僕の足に引っ掛かってこけてしまったみたいだった。
いけない、最近ぼーっとする事が多くなってきている。
「すまんっ・・・。」
僕が彼女の腕を掴んで立ち上がらせると青い痣が出来ていた。
「あっ・・・ごめん!保健室行こう!保健室!!」
彼女に新しい傷をいれた僕は焦ってしまった。
「あ、大丈夫です。これ前からあったから・・・。」
「違うだろっ。」
僕は無意識にななを引っ張って保健室に連れて行った。
保健医の広間先生はまだいた。
「あら、先生?どうしましたか?」
僕は広間にななを差し出した。
「怪我・・・させてしまいまして・・・。」
「いやっ・・・あの・・・違・・・。」
「僕の足が掛かってしまったみたいで。」
広間はななの脚の青痣を見て首をかしげた。
「コレ、古い傷・・・ですよ?」
「あ!これ、こけちゃったんです・・・。」
広間はまじまじとななを見つめる。
「ちょっと先生は席を外して貰えますか?」
広間に言われるまま僕は保健室から出た。
しばらくしてななが出てきた。
「何でもなかったです。」
ななは曖昧に笑うと一礼して帰って行ってしまった。
保健室から広間が出てくる。
「煙草を押し当てられたような痕がありました・・・。」
「え?」
「それも古いのから結構最近のまで・・・。」
僕はまだ小さく見えるななの後姿を見つめた。
「もしかしたら・・・もしかしたら・・・です。」
広間は悩ましそうに項垂れた。
僕の中で何かがはじけた。