―何で……?
慌ててその場から離れようとするが、
あまりの恐怖で身体か上手く動いてくれない。
転んだ拍子に隼人にも殺された遺体の血がたくさん付着してしまい、気が動転していた。
「…何してるの?」
相変わらずの表情でリリィは隼人を見つめる
「………な・何で…こんな所に死体があるんだ…」
直視出来ないほどの醜い死体と、一面に広がる強く甘い香りに気が失いそうになる。
一歩、また一歩とリリィから離れる隼人だが、微笑みながら近づいてくるリリィ。
「来るな…!」
「隼人…びっくりした?この光景…怖いの…?
でもあなた薄々と気づいてるんじゃないかしら?あなた自身の異変に…」
「やめろ!!」
「血生臭いはずなのに…とてもいい香りがするでしょう?」
「お前は一体何者なんだ!」
怯えながらも必死にリリィに抵抗していく隼人。どんどんと後ろにさがっていたが、壁に当たり逃げることも出来なくなった。
尚も、一歩一歩隼人に近づき妖しい笑みをうかべるリリィ。
「…やめろ…」
リリィは血に染まった自分の指をゆっくりと隼人の口の中へ入れていく。
隼人はあまりの恐怖にただその行為に受け入れていくしかなかった。
「ねぇ…おいしいでしょう?甘くてまるで蜜のように…隼人も一緒に食べてみない?」
リリィの目線が死体の方に向いた瞬間隼人の恐怖がピークに達した
「うわあぁぁっ!!!」
とっさにリリィを突き飛ばし、一目散にその場から逃げていった。
リリィは追いかけることもせず、逃げる隼人を見つめ微笑んでいた。
―何で…何で!!
確かに鉄の味しかしない血なのに…
とても甘く感じてしまったなんて……!
どうして…?
恐い…
リリィは人間じゃない!!
俺もあんな人間を喰う化け物になっちゃったのか!?
嫌だ!!
嫌だよ!!
誰か…助けてくれよ…
いっそ俺を殺して………!!
―続く―