alone 51=昔話(side圭?)=

兼古 朝知  2010-04-16投稿
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柊 圭。

彼は生まれてすぐ、両親に棄てられた。

しかし運良く柊 東吾(ヒイラギ トウゴ)に拾われ、若い彼を義父として圭は育った。

東吾は自神宗教祖、中村理一の部下だった。
理一は東吾に、圭を水鶴の従者にさせることを命じた。

まだ無邪気な水鶴。
理一の娘。
それに比べ、圭は気味が悪いほどに静かで、大人しすぎた。

水鶴の部下になった当時、圭は10歳。水鶴は8歳。晶や晴一と離別してから間もないので、水鶴は この時、まだ明るい性格だった。


圭は10歳とは思えないほど笑わずに、10歳とは思えないほど冷酷で、10歳とは思えないほど口数が少なかった。

「ひーらぎッ!よろしくね!!」

水鶴が笑って そう言っても、圭は

「承知しまし…た」

と言うだけだった。


圭は何故こうなってしまったのか。

…その理由は、東吾の育て方にあった。


「笑うな。泣くな。何も考えるな。いつか現れる主に忠実に仕えろ」

「何で…?」

東吾の冷酷な言葉に、まだ幼く表情のあった圭は尋ねた。
…その時。

――パァンッ

圭の頬が叩かれた。

「口答えは許さん。黙って言うことを聞けばいいんだ、圭」

「どうして…!?」

圭は叩かれた頬を押さえ、涙目で聞く。
反論する義息子に、東吾は突然激昂した。

「泣くなと言っただろうが!!」

――バシッ!!ドカッ!!ドスッ!!ズンッ!!

東吾は圭を殴り、蹴り、引きずり倒した。

「いいか圭、
お前はただのモノだ!!
無駄なことは一切考えるな!!
戦場じゃ捨て駒だ!!
主の前じゃ操り人形だ!!
いつ棄てられてもいい
玩具の1つなんだ!!」


――オレハ モノ?
――オレハ コマ?
――オレハ ニンギョウ?
――オレハ ガング?


――ソウカ、オレハ…
イツ ステラレテモイイ、
タダノ モノ ナノカ…。


そう認識したことで、圭は完全に感情を抹消できたのだった。




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