空っぽの客席。静かなステージに灯されたライト。ホール内に響く4人の足音。
光希達は先ほど客席から観ていたステージに足を踏み入れた。
慶「…うわあ…こんなでかいとこで叫んだら気持ちいいやろな…」
慶太郎が上を見上げ呟く。
黒「はっはっは。やってみるかい?」
慶「んー、今はまだやめておきます」
黒「“まだ”?」
ステージの真ん中でライトの光を浴びるグランドピアノ。そこまで歩いてくると光希が不安げに訊いた
光「本当にこんなところで?」
黒「ああ。何でもいい。好きな曲を」
光「…」
黒田が椅子を引き、光希を促す。
慶「…俺、客席で聴いててもいいですか?」
竹「ええ、どうぞ」
慶太郎はステージからおりると中央まで歩いていき客席の間に立った
光「…好きな曲……」
右を向くと客席の中央で、立ったままステージを眺める慶太郎が目に入った。
そして、もう一度ピアノに向きなおり、光希は考える
――好きな曲…そうや、ずっと…小さいときから大好きだった曲――
鍵盤に手を置く。
呼吸さえも“音”に聞こえる
光希は大きく息を吸い込む。
光希の指先とともに、ピアノは歌い始めた