私達の席に3名のホストがついた。
「みかちゃん久しぶり。中々来てくれないから、寂しくて死にそうだったょ。」
実に ホストらしい挨拶だが、台本通りに読んでいる新人俳優のほうが上手いだろうと思った。
他の2人も部下の女のコ達を夢の国に連れて行ってる。
私は、端で微笑みながら、時々お相手をしてあげていた。
その時、
「お隣、よろしいでしょうか?」
振り向くと、そこにいた彼は周りのホストとは全く違った美青年だった。
茶髪ロン毛で盛っていりホスト達の中、黒髪で短髪ではないが、ユニックス的な長さとでも言おうか。
目鼻立ちがハッキリしていて、背も高くモデルのようだった。
「どうぞ…」
「お名前、教えて頂けますか?」
「神楽 せいらです」
「せいらとは、珍しい名前ですが、漢字で書くんですか?」
「未来を生きるという意味を込めたようで『生来』と書くの」
「素敵なご両親なんでしょうね。愛情が込められた名前ですね…」
「そうかな…?」
「僕は、慧(けい)と言います」
実に紳士的な感じが何だか…ホストクラブに似つかわしくなかった。
色々な話をした。
彼は、18歳だった。見た感じや話の雰囲気から24、5かと思っていたからびっくりした。
私が、20歳で生んだらこいつぐらいの息子がいたのかと思うと自己嫌悪に陥る。
彼女たちは、時間を忘れて楽しんでいたが、閉店時間だった。
支払いをして、彼女達と別れた。
陽が昇っていて、眩しかった。
私は、近くのカフェで珈琲を飲んで行く事にした。
買った新聞を読みながら大好きなカプチーノを飲んでいた。
周りは、出勤前のおじさんと仕事あがりのギャバさん達だった。
「生来さん? 」
見上げると、慧が私服で立っていた。
「お疲れさま。今から就寝?」
「いや…仕事なんです」 「えっ!…」
「一緒に座っていいですか?」
「ぷっ(笑)さっきも聞いたね!」
「そうか…(笑)」
実に陽の下で見ると美形が際立つ。
「仕事って…。さっきの仕事は…」
「あぁ、今のはバイトなんです。僕浮いてるでしょ?仕事は、カメラマンの補助です。駆け出しで…それだけでは、食べていけないのが現状で」
「へぇ〜?カメラマンになるんだ」
「なりたいなって。」
それから、一時間ほど彼の夢を聞いた。
久しぶりに…心が引き込まれて行く自分が嫌だった。
痛みだけが心を支配した。