alone 53=昔話(side圭?)=

兼古 朝知  2010-04-17投稿
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「え…?」

水鶴は、音をたてて目の前に転がったものを、ポカンと見ていた。
そこにあるのは、剣。

「理一さん!?」

菊乃が二・三歩後退して、叫ぶ。

「え?え?母上を、その剣で…?」

水鶴はオロオロして言っていると、兵のうちの一人が理一の前に出た。

「きょっ、教祖様!!奥方様を水鶴様に殺させるとは何をお考えですか!?」

「…私に逆らうか?」

理一が不敵な笑みを浮かべると、その兵の首がゴロリと落ちた。

「――ッ!?」

水鶴が口を手で覆って後ずさった。

兵の首を斬ったのは、東吾だった。

「申し訳ありません教祖様。続けて下さいませ」

東吾は そう言うと、死体と首を持って去っていった。

「さぁ水鶴、やってみなさい」

「…!!」

水鶴は、理一と菊乃を交互に見やった。

「わ、私…!!」

「うん?」

「私にはできません…!!母上を、殺せません…」

水鶴は涙目で言った。
理一にここまで恐怖を抱いたことの無かった水鶴は、ガタガタと震えていた。

「そうか…『駄目な子』だな、水鶴」

理一は水鶴の前に ゆらりと立った。

「理一さんッやめて!!」

菊乃が理一に叫ぶ。

「殺しは せんさ…。嘘つきには罰が必要だろう」

――バキッ!!

生々しい音が辺りに響く。菊乃は思わず目を瞑った。

「…!!」

理一は目を丸くした。

殴られ、口の端から血を流しているのは娘ではなく、圭だったからだ。


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