alone 54=昔話(side圭?)=

兼古 朝知  2010-04-17投稿
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「……」

圭は何も言わず、キッと理一を睨む。

「生意気な子供だな。柊の子とは思えないくらいだ」

ニィと口角を上げ、理一は笑った。

「よしてよ、柊!」

水鶴が圭に触れようとした時だった。

「圭いぃぃ!!貴様あぁああぁぁ!!」

東吾の怒鳴り声が辺りに響いた。刀を持った東吾が圭に襲いかかる。

圭は動かなかった。

――ザクッ!!…ドサッ…

圭の左腕が、肘の先から斬り落とされた。

「柊ぃッ!!」

「……ぅ…!!」

圭は小さく呻いたが、変わらず理一を睨んだ。
水鶴が圭の肩を掴み、もうよせと言う。

「目だけは一人前だな。水鶴を護ろうとする気持ちは強いようだ」

理一は嘲笑うのようにして笑う。

「父上ッ!柊を、柊を殺さないで!!」

水鶴の懇願に、理一は温度の無い目つきで返答した。

「では選びなさい。ここで柊の息子が殺されるのを傍観するか、母上を己の手で殺すか…」

「そん…な…!!」

渡された剣を持つ水鶴の手が、ガクガク震えている。

「…水鶴!!」

「!!」

菊乃が水鶴の名を呼ぶ。
水鶴はビクッとして振り向いた。

「は はう え…」

「私を…母を、殺しなさい…!!」

菊乃は己の死を覚悟した。そして水鶴に歩み寄っていく。

「圭君が殺されてもいいの…!?」

「だって母上…」

「私は十分に生きた…。大丈夫…恨みなんかしないわ。大切な一人娘だもの」

(やだ。

柊を失うのも、

母上を失うのも。

嫌だ嫌だ嫌だ。

でもこのままじゃ柊が。

でも母上を。

父上を裏切る?

どれも嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!)

「ぅわぁああぁあああぁぁあぁああ!!」


――ドスッ!!




水鶴は…



菊乃を、刺した。

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