「……」
圭は何も言わず、キッと理一を睨む。
「生意気な子供だな。柊の子とは思えないくらいだ」
ニィと口角を上げ、理一は笑った。
「よしてよ、柊!」
水鶴が圭に触れようとした時だった。
「圭いぃぃ!!貴様あぁああぁぁ!!」
東吾の怒鳴り声が辺りに響いた。刀を持った東吾が圭に襲いかかる。
圭は動かなかった。
――ザクッ!!…ドサッ…
圭の左腕が、肘の先から斬り落とされた。
「柊ぃッ!!」
「……ぅ…!!」
圭は小さく呻いたが、変わらず理一を睨んだ。
水鶴が圭の肩を掴み、もうよせと言う。
「目だけは一人前だな。水鶴を護ろうとする気持ちは強いようだ」
理一は嘲笑うのようにして笑う。
「父上ッ!柊を、柊を殺さないで!!」
水鶴の懇願に、理一は温度の無い目つきで返答した。
「では選びなさい。ここで柊の息子が殺されるのを傍観するか、母上を己の手で殺すか…」
「そん…な…!!」
渡された剣を持つ水鶴の手が、ガクガク震えている。
「…水鶴!!」
「!!」
菊乃が水鶴の名を呼ぶ。
水鶴はビクッとして振り向いた。
「は はう え…」
「私を…母を、殺しなさい…!!」
菊乃は己の死を覚悟した。そして水鶴に歩み寄っていく。
「圭君が殺されてもいいの…!?」
「だって母上…」
「私は十分に生きた…。大丈夫…恨みなんかしないわ。大切な一人娘だもの」
(やだ。
柊を失うのも、
母上を失うのも。
嫌だ嫌だ嫌だ。
でもこのままじゃ柊が。
でも母上を。
父上を裏切る?
どれも嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!)
「ぅわぁああぁあああぁぁあぁああ!!」
――ドスッ!!
水鶴は…
菊乃を、刺した。