alone 56=独りなのか=

兼古 朝知  2010-04-18投稿
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そして現在。

「はッ、はぁ、はぁッ」

息切れしながらも走る、水鶴。

「はぁッ、は…。ぅ、うぅぅう…」

5キロほど走ったところで、水鶴は立ち止まった。
そしてそのまま、ガクリと膝を折った。

「柊…」

その口から零れるのは、自分についてきてくれた部下の名。
自分が壊れたあとも自分に仕え、今こうして逃がしてくれた部下の名。


「柊いぃいぃぃいいい!!ッあぁああぁあぁぁ!!」

とうとう泣き出してしまった水鶴。
地面を力任せに殴り、拳には血が滲む。


失うくらいなら、はじめから手に入れなければいいと。
そう思って圭を突き放そうと、冷たくしたはずだったのに。
圭は離れなくて。
圭まで壊れて。

いつしか、大切な存在になっていた圭を失うのが怖くて…。

もう私には何もない…。
父上は あの日から信頼していない。
兵は私を恐れるだけ。


あぁ。

独りか、
独りか、
独りなのか。


心の支えが消えた今。
私の存在は必要なのか?

「うぅ…ッ」

水鶴は また前に進みだした。父、理一のいる自神宗の陣の方向へ。

それ以外に彼女に行き先は なかった。



水鶴を追いかける晶は、途中皆神の兵と会った。

「おっちゃん、水鶴見なかった!?」

「中村水鶴のことか?さっき出くわしたぜ」

晶の問いに、顎髭をたくわえた兵は答えた。

「…!? 何もされなかったの?」

そのまま走り去ろうとした晶だが、思わず止まって聞いた。

「あぁ、俺も殺されると思ったんだがな。何故か逆に向こうが逃げていった感じだったぜ?」

何でだろうな?と苦笑いしつつ、兵は言った。

「わかった、あんがとな、おっちゃん!!」

「気をつけろよ晶ぁ!」

晶は また走っていった。


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