―この子が手配されて時間が経っているにも関わらず誰も発見できていない…となると、貴族や王族の可能性は限りなく低い…。
彼女は素早く頭の中で考えを巡らせながら、
「依頼書を」
と、ワイズに言った。
「ほらよ」
ワイズは彼女が考えに没頭して自分を見ているようで実は見えていない、という事を察して、苦笑した。
―町娘の可能性もかなり低い。この年だったら看板娘として店の前に立っているはず…。
メディナは依頼書を受け取って、書かれた内容に目を移した。
―依頼者はカシアス王国…か。
彼女は一瞬、眉間にしわを寄せた。
「どうした?何か不備でもあったか?」
ワイズはその変化を見逃さなかった。
「いいえ、何もないわ」
メディナは首を横に振ると、依頼書を懐にしまった。
―町娘では無い、となれば村娘ね。
彼女は鋭く目を光らせて、
「また来るわ」
と、言って、足早に店から出て行った。
―メディナ…何かあったのか?
ワイズはその後ろ姿を少し心配そうな表情で、見つめていた。