高い煙突のある町
…その町の煙突
赤と白のストライプは一見鮮やかだ
しかし
汚れた空気を吐き出している
戦後の高度経済成長により、僕の町に大企業がきた
たくさんの従業員、そしてその家族
企業が来たことにより、町の雇用は格段に増えた
僕の父もその企業の工場で働き始めた
初め、喜び活力に満ちていた父は半年後には見る影もなく
痩せて落ち窪んだ頬は、しゃべる際にもほとんど動かない
母は僕の前では気丈に振る舞う
まるで母の姿をした操り人形を見ているようで、こっそり僕も泣いたりした
工場が出来てから、川で遊べなくなった
水は地獄から沸き上がってきているのかと思う程、重々しい空気を漂わせている
町を壊している
そのことを、その頃の小さな僕でも感じることができた
友達のカズ君が死んだ魚を川から拾って来た
その三ヶ月後に
父は死んだ
過労
それが、死因だった
工場側は何も事情を教えてくれなかった
母は泣き崩れたが僕は涙が出なかった
母を支えねばならない
そんな使命感があったのかも知れない
それから十年がたった今
僕は父を殺した工場で働いている