煙突のある町

かんたろう  2010-04-19投稿
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高い煙突のある町

…その町の煙突

赤と白のストライプは一見鮮やかだ

しかし

汚れた空気を吐き出している


戦後の高度経済成長により、僕の町に大企業がきた
たくさんの従業員、そしてその家族

企業が来たことにより、町の雇用は格段に増えた

僕の父もその企業の工場で働き始めた

初め、喜び活力に満ちていた父は半年後には見る影もなく
痩せて落ち窪んだ頬は、しゃべる際にもほとんど動かない

母は僕の前では気丈に振る舞う

まるで母の姿をした操り人形を見ているようで、こっそり僕も泣いたりした


工場が出来てから、川で遊べなくなった

水は地獄から沸き上がってきているのかと思う程、重々しい空気を漂わせている

町を壊している

そのことを、その頃の小さな僕でも感じることができた

友達のカズ君が死んだ魚を川から拾って来た

その三ヶ月後に

父は死んだ

過労

それが、死因だった

工場側は何も事情を教えてくれなかった

母は泣き崩れたが僕は涙が出なかった

母を支えねばならない

そんな使命感があったのかも知れない


それから十年がたった今

僕は父を殺した工場で働いている

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