雨粒が屋根を叩く音が小屋の中まで響いて、会話さえもままならなくなっていた。
「いつまで続くんだ…」
ザックはそう呟きながら、今日何度目かのため息を吐いた。
三日前、ザックとミーナはカシアス山の麓の村で夫婦二人だけの農家に手伝いを願い出た。
警戒されたが、自分と彼女は兄弟である事、実家が農家であったが、長雨で畑が使えなくなった為、仕事を探さなければならなくなった、という旨を伝えた所、
「一週間だけなら…」
と、渋々ながらも手伝う事を許されたのである。
しかし、その次の日から雨が降り始め、手伝いどころか調査にまで支障をきたすという事態に陥ってしまったのだ。
「雨の日に外に出れば逆に怪しまれるよね…」
二人はそう言って何度もため息を吐きながら、納屋として使っていた小屋に毛布を借りて寝泊まりしていた。
「あー、もう!これじゃ、何をしにここまで来たのかわかんないよ!」
ミーナは毛布の上に寝転がって、大きな声を出した。
「農家の天敵は長雨と干魃だからね…」
ザックは積まれた藁をいじって、呟いた。
「何か言った?」
「農家の天敵は長雨と干魃だ、って言ったの」
「そうなのよね。雨だとお日様の光が当たらないから野菜の成長が悪いし、かと言って雨が降らないと枯れるし…」
「農家は難しいよね」
「ねー」
二人はうんざりしたような顔で、頷き合った。
「ダリルだったらこの状況、我慢できないだろうな…」
「あはは、それ言えてる!多分、二日で我慢できなくなってるよ!」
ミーナは小さく笑って、手を叩いた。
「…ん?待てよ…ダリルたちの調査の結果を見れば、カシアスかダミスかわかる可能性があるんじゃないか?」