私の家は父がある小会社の社長で、母は専業主婦というなんとも中間にあるような家庭であった。
一人っ子なので大事にはされてきたが、そんな生活に少し不満を感じることがある。それは、現在高校一年である私は学校のみんなに利用されすぎている事だ。
私の名字は一と書いて『にのまえ』と読む。実際この名前で何度も馬鹿にされてきたが、さすがに高校生ともなってそんな餓鬼はいなかった。
「一さん!!一緒に帰ろう!」
このように普通に声を掛けて来る人は多い…けれど。
「今日みんなでカラオケ行くんだけどさ、一さんも行こうよ」
決定権ないし…
この時代青春している人物にとっては当たり前だろうが、私にそんなもの縁がある筈もない。では、何故声を掛けられるかって?
「…ねぇ、なんでこんなダサい奴誘ったの?」
「引き立て役に決まってるじゃん。第1金持ってるんだしさ、払わせりゃいいんだよ」
わざと聞こえるような内緒話をしなくても十分わかってるんだけどね…
これが、私の立場。
かなり不満。
物凄い不満。
死ぬ程不満。
社長って言ったって小さな食品製造会社なのに、そんな金持ちである筈がない。ていうか普通に暮らしているだけだと思ってたんだけど私ってそんなブスだっけ?
というわけで体よく金を払わされた私は帰路についた。とりあえずカラオケ中の説明は無駄だと思うからしないが。
夜だからといって怪しい人に会う事もなく家に辿りつき、ドアを開ける。
開かないし
そっか門限か…ってこっちは疲れて帰って来てるっつーのに!!
結局頼れる人物なんていないんだな…私には。
しょうがない、公園でもぶらぶらして来よう。
…みんな、消えてしまえば良いのに…
途方もないことを考えながら公園に付くと、先客がいた。
こんな真夜中に一人で…?
とても人のこと言える立場じゃないけど、なんだかその人には私とちがう怪しさを感じた。仕方ないから気付かれないようにその人がいる滑り台から離れたブランコにそろそろと近付いて座る。
忍者か私は。
とりあえずそこに行くとその人は女性だとすぐにわかった。私と同じ位髪が長い。私は長い髪を後ろで結った髪型だがその人は伸ばしてそのまんまだった。しばらく彼女に目を向けていると、
彼女は
ぐるり
と、
凄い速さで私に振り向く。
「!!??」
その時に少し恐怖を感じた…失礼だったかな…