私は、後輩の子たちとまた、『クラブ』に行く事になった。
一度は断ったが…彼『慧』にも会いたかった。
彼女達は、お気に入りの彼達を迷いもなく指名している。
「主任、誰にします?」
「私は…別にいいよ…」
「みか!この間主任、慧とかいう子と楽しそうだったよ…主任、慧で良いですか?」
「あっ、うん。」
単純にうれしく、気の利く後輩たちに関心してしまった。
店内は、てんやわんやで女と男の欲望の渦しがひしめきあっていた。
「こんばんは。生来さん。ご指名…あっありがとうございます。」
「いやぁ、他に誰も知らないし…」
「そうですよねぇ。まだ、未成年だし、お酒のお相手出来ないですもんね…」
「いやぁそうじゃなくて…。この間、お話し楽しかったし…」
「ありがとうございます。」
慧は、席に着くとこの間のように世間話や身の回りの出来事を話してくれた。
「生来さん、何か、夢中になった事ありますか?」
「あっ、うん。」
「教えて頂けますか?」
「後輩たちも知らないから、あなたの心の中にしまっておいてくれるなら…」
「はい。何ですか?」
「二十代から始めた、サーフィンかなぁ。今は…月に1、2度だけしか行けないけど…。」
「えっ!予想外な答えにびっくりです。」
「サーフィンしていると無心で夢中になれるし、自然と対話出来るから好きなんだ」
私は…知らないうちにペラペラ一人で夢中に話していた。
慧には、何だか…伝えておきたかった。
気が付いたら、閉店間際だった。
私は、この間のカフェで一服してから、帰る事にした。
少しばかりの期待をしている。
「あっ、…」
慧が…スーツ姿のまま女のコを支えて通り過ぎていった。
少しばかりの期待をしていた自分が情けなかった。
私は、新聞を読みながら、カプチーノを飲んでから帰る事にした。
30分くらい経っただろうか…。会計を済まして外に出ると慧が戻ってきた。
「あぁ。生来さん、今日もここに居たんですか?」
「どうしたの?スーツ姿で…ましてや、戻ってきて…」
お客さんをちょっとタクシーに…生来さん、ちょっと待ってて」
慧は着替えて、カフェに入ると、カフェオレを飲みながら、眠ってしまった。
私は…慧の寝顔を飲みながら、幸せを感じた。
このまま時間がとまって欲しかった。
私は…慧に恋心を抱いてしまった。