やる気の感じられない曇った目をした美少女に、教室で見つめられた。
「これは君がやったの?」
美少女はため息混じりに俺から視線を外す。
その先には、首を絞められて倒れている人間。
息はもうない。
ドアの前には美少女。
窓際の机には死人。
そして、俺はその中間。
経験したことのない挟まれ方である。
「…俺じゃない。見つけたときにはこうだった」
感情を出さないように、低い声で小さく呟く。そうしないと、パニックで腰を抜かしてしまいそうだった。
「そう」
美少女は俺の言葉に頷いたものの、これといって関心がない様子だった。
くぐもった顔。
死んでいるような目
伸ばしっぱなしの髪。
けだるそうな態度
何を取っても駄目人間のオーラが漂うのに、全てを帳消しにするような、超越した容姿だ。
「君の名前は?」
彼女が質問してくる。
「ああ、横山春喜だ」
俺は簡単に答える。
彼女は笑わない。けだるそうに、頷く。
「横山君。何故かはわからないけど、人が死んでいる。やるべきことは?」
慌ててる人間を諭すように静かに語る彼女。自分の内心の動揺を見透かされているようだった。
とても、同じ高校生とは思えない落ち着いた態度に、得体の知れなさを感じずにはいられない。
「…警察に連絡」
俺は搾り出すように声を出した。心臓を握りしめるような気持ちの悪い圧迫感がする。
その原因は後ろで転がっている仏様ではなく、目の前でけだるそうに佇む女神様に、だ。
「とりあえず職員室に行きましょう。休日だけど、多分先生は、まだいると思うし」
彼女は、「あー、めんどくさい」と教師に呼び出された学級委員のように呟き教室を出た。
俺はその後をついていく。
時間は午後8時。人の気配はほとんどない。
何故、彼女がこんな時間に休日の学校にいるのだろうか。