サバス

柊そら  2010-04-21投稿
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 やる気の感じられない曇った目をした美少女に、教室で見つめられた。

「これは君がやったの?」
 美少女はため息混じりに俺から視線を外す。
 その先には、首を絞められて倒れている人間。

 息はもうない。
 ドアの前には美少女。
 窓際の机には死人。
 そして、俺はその中間。
 経験したことのない挟まれ方である。

「…俺じゃない。見つけたときにはこうだった」

 感情を出さないように、低い声で小さく呟く。そうしないと、パニックで腰を抜かしてしまいそうだった。

「そう」

 美少女は俺の言葉に頷いたものの、これといって関心がない様子だった。
 くぐもった顔。
 死んでいるような目
 伸ばしっぱなしの髪。
 けだるそうな態度
 何を取っても駄目人間のオーラが漂うのに、全てを帳消しにするような、超越した容姿だ。

「君の名前は?」

 彼女が質問してくる。

「ああ、横山春喜だ」

 俺は簡単に答える。
 彼女は笑わない。けだるそうに、頷く。

「横山君。何故かはわからないけど、人が死んでいる。やるべきことは?」

 慌ててる人間を諭すように静かに語る彼女。自分の内心の動揺を見透かされているようだった。
 とても、同じ高校生とは思えない落ち着いた態度に、得体の知れなさを感じずにはいられない。

「…警察に連絡」

 俺は搾り出すように声を出した。心臓を握りしめるような気持ちの悪い圧迫感がする。
 その原因は後ろで転がっている仏様ではなく、目の前でけだるそうに佇む女神様に、だ。

「とりあえず職員室に行きましょう。休日だけど、多分先生は、まだいると思うし」

 彼女は、「あー、めんどくさい」と教師に呼び出された学級委員のように呟き教室を出た。
 俺はその後をついていく。
 時間は午後8時。人の気配はほとんどない。
 何故、彼女がこんな時間に休日の学校にいるのだろうか。



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