「じゃっ、自神の教祖のとこまで案内してくれるか?水鶴」
晶の言葉に、水鶴は頷いた。
自神の本城に行く前に、水鶴はどうして自分の性格が変わってしまったか説明した。
母を殺したこと、圭が己を庇って左腕を失い、鎌が取りつけられたこと、尊敬してきた父への失望感……。
「父上は…人を殺すことにためらいを持っていた私に、常に こう言っていた」
――『母上を殺せたのに、赤の他人は殺せないのか?』
「くっく…全く その通りだと思った。いや、正確には今もだが…」
水鶴は自嘲ぎみに笑う。
それを聞きながら、晶は自分の知らなかった水鶴の暮らしを想像する。
「圭が…心の支えだったんだな」
「…あぁ。今日という今日まで…気づかなかったがな」
水鶴は寂しそうな表情で頷いた。
そして水鶴は本城の門の前に立った。
「ここから中に入る」
晶がその門をまじまじと見ていると…
「…晶」
水鶴が晶に声をかけた。
「何だよ?今更 怖くなったとか言うんじゃねーぞ?」
晶が片眉を上げて聞くと、ムッとした様子で水鶴が反論した。
「そんなわけないだろう。その場で父上を殺すのか?それとも皆神の陣内で公開処刑にでもするのか?…と聞きたかっただけだ」
「あー、なるほどな。俺ひとりじゃ判断つかねぇから、生け捕りにするのが得策ってもんだろ」
「…そうか」
水鶴は濡れた髪をかきあげた。
――ザァアァァア…
雨は、
まだ止みそうにない。