alone 62=止みそうにない=

兼古 朝知  2010-04-22投稿
閲覧数[387] 良い投票[0] 悪い投票[0]



「じゃっ、自神の教祖のとこまで案内してくれるか?水鶴」

晶の言葉に、水鶴は頷いた。
自神の本城に行く前に、水鶴はどうして自分の性格が変わってしまったか説明した。

母を殺したこと、圭が己を庇って左腕を失い、鎌が取りつけられたこと、尊敬してきた父への失望感……。

「父上は…人を殺すことにためらいを持っていた私に、常に こう言っていた」

――『母上を殺せたのに、赤の他人は殺せないのか?』

「くっく…全く その通りだと思った。いや、正確には今もだが…」

水鶴は自嘲ぎみに笑う。
それを聞きながら、晶は自分の知らなかった水鶴の暮らしを想像する。

「圭が…心の支えだったんだな」

「…あぁ。今日という今日まで…気づかなかったがな」

水鶴は寂しそうな表情で頷いた。

そして水鶴は本城の門の前に立った。

「ここから中に入る」

晶がその門をまじまじと見ていると…

「…晶」

水鶴が晶に声をかけた。

「何だよ?今更 怖くなったとか言うんじゃねーぞ?」

晶が片眉を上げて聞くと、ムッとした様子で水鶴が反論した。

「そんなわけないだろう。その場で父上を殺すのか?それとも皆神の陣内で公開処刑にでもするのか?…と聞きたかっただけだ」

「あー、なるほどな。俺ひとりじゃ判断つかねぇから、生け捕りにするのが得策ってもんだろ」

「…そうか」

水鶴は濡れた髪をかきあげた。



――ザァアァァア…



雨は、
まだ止みそうにない。






投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 兼古 朝知 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ