――さよならの日
あいつの周りにはたくさんの人。
うちは一人、ぼんやりするばかり。
そして―\r
「ゆき、俺…そろそろ行くな」
「え…もう?」
「…うん。」
背を向け歩きだすこうた。
そんなあいつに手を振る皆。
うちは何もできずつっ立ったまま。
弱気なうちにはやたらと強くなる友人は、背中を押して欲しい時に限っておらん。
人を見送るのってこんなに悲しかったっけ?
もしここで、“好き”の一言でも言ってしまえば、うちは皆の笑い者。
そんな恥、捨てれたらいいのに。
だんだん離れるあいつ。
あかん
「待って!」
皆から離れて、あいつに駆け寄る。
「?」
「あの、いっぱいごめん!…それから…」
きっと今のうちの顔、最悪。
「…ありがとう」
その言葉が精一杯やった。
あいつは“こちらこそ”って笑ってた。
結局臆病なうちは好きもバイバイも言えなかった。
ただ、二人はまたねって手を振った。
うちはもっと強くなる。
そして、今度はきっと伝えてやる。絶対に。
次会った時、もし彼女が出来てたら悲しいけど、でも、うち以外にあんな奴好きになる人、きっとおらん!