さすがに10年もたてば、町は以前の物とは変わってきていて
あの時、すでに汚れていた川は
今、耐え切れないニオイがする
それが漂う街中を一人歩く
残業をさせられた帰り道、街灯の少ない道
そんな道のわずかな街灯は、チカチカとおぼつかぬ明かりを燈している
まるで、町がSOSを知らせてきているようだった
部屋に着いたらもう12時をまわっていた
母はもう寝ている
起こさぬように、静かに食事を済ませた
このオンボロなアパートは隙間風がふく
悲しい音を立てながら、僕らの体へふれる
その音を激しい咳が遮る
壁の薄いため隣の音がよく聞こえる
隣には浪人生が住んでいた
まだ勉強をしてるみたいだ
この町の汚れた空気が彼を苦しめる
咳はひとしきり続き
…そしてまた悲しい音が聞こえはじめた