水鶴が本城の中へ入っていく。それに続き、晶も入っていった。
「ひッ…」
本城の入口付近にいた30代くらいであろう、恐らくは非戦闘員の女が小さな悲鳴をあげる。
「…おい」
「は、はいッ!?何でしょうか、水鶴様!!」
水鶴が声をかけると、女は過剰な反応を見せる。
その光景を、晶は首をひねって不審そうに見ていた。
「…敬語を使うな。様を付けるな。敬うな…」
「え…?それはどういう意味で…!?」
「自神を裏切るからだ」
水鶴の言葉の意味がうまく飲み込めないのか、女は ただ黙っている。
「陣内にいる全ての人間に伝えてはくれないか…?教祖もここまでだ、今日から自由になると…」
「はッ…はい!」
女は ぱぁっと顔を輝かせて、嬉しそうに走り去っていった。
「フフ…晶。自神宗内でも、私と教祖は嫌われているものだろう?」
水鶴は微笑して晶に問いかけた。
晶は、頭の後ろをガリガリと掻いて答える。
「嫌われてるっつーか、怖がられてんな」
「似たようなものだ」
「ったく…。似てねーっつの」
晶は呆れ気味で言った。
「さぁ行くか。父上のところへ」
「おうよッ!」
水鶴が教祖のいるであろう方向に目を向けて言うと、晶はニカッと笑って返事をした。