alone 64=来ると思ってたよ=

兼古 朝知  2010-04-23投稿
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途中で何人もの人に会った。何度も自分は自神を裏切ると説明した。
しかし誰も水鶴を咎めることはなく…彼らは歓喜の声をあげていた。

「不思議な感覚だ…」

水鶴は苦笑いを浮かべて言った。

「今まで会った自神の人たちの歓喜の分だけ…私や父上に対する憎しみは大きいのだろうからな」

「それも今日で終わりだろ?」

「いや…不信感を拭いきれない人もいるだろう」

「何だよ、後ろ向きだなー、お前は」

晶が持っていた刀の鞘をいじりながら言う。

「…失礼だな。極めて現実的だと言え」

それと鞘で遊ぶな、と眉間に皺を寄せて水鶴は言うのだった。

「どうせ非現実的で手遊びの多いヤツですよ、俺は」

むすっと ふてくされた様子で手遊びをやめ、本城へ入っていく晶と、晶の前をゆく水鶴。

そして自神宗教祖、理一のいる部屋の扉の前に来た。水鶴がいる為、周りにいる兵たちは非常におとなしい。

水鶴が口を開いた。

「…晶、心の準備は 出来ているのか?」

「ハッ、お前こそ大丈夫かよ?水鶴!」

「…本音を言えば出来てない」

「おいおい…マジで大丈夫か?」

晶が冷や汗をかきながら言うと、水鶴は薄く笑って言った。

「心の準備は出来ていないが…別にそれによって影響されるものは何もない。大丈夫だ」

「そっか。まぁ、何かあったら俺が護ってやるから、安心しとけ!」

「はは…お言葉に甘えておこう」

――ギィイ…

重い扉を、晶が開ける。

部屋の奥の玉座に、理一が座っていた。

「やぁ…来ると思ってたよ。水鶴に、皆神の少年…」

理一の言葉と共に、どこからともなく、自神の兵たちが武器を持って現れた。


「な、に…!?」

晶たちが戸惑う中……。


――バタ…ン…


開けた扉が、閉まった。

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