途中で何人もの人に会った。何度も自分は自神を裏切ると説明した。
しかし誰も水鶴を咎めることはなく…彼らは歓喜の声をあげていた。
「不思議な感覚だ…」
水鶴は苦笑いを浮かべて言った。
「今まで会った自神の人たちの歓喜の分だけ…私や父上に対する憎しみは大きいのだろうからな」
「それも今日で終わりだろ?」
「いや…不信感を拭いきれない人もいるだろう」
「何だよ、後ろ向きだなー、お前は」
晶が持っていた刀の鞘をいじりながら言う。
「…失礼だな。極めて現実的だと言え」
それと鞘で遊ぶな、と眉間に皺を寄せて水鶴は言うのだった。
「どうせ非現実的で手遊びの多いヤツですよ、俺は」
むすっと ふてくされた様子で手遊びをやめ、本城へ入っていく晶と、晶の前をゆく水鶴。
そして自神宗教祖、理一のいる部屋の扉の前に来た。水鶴がいる為、周りにいる兵たちは非常におとなしい。
水鶴が口を開いた。
「…晶、心の準備は 出来ているのか?」
「ハッ、お前こそ大丈夫かよ?水鶴!」
「…本音を言えば出来てない」
「おいおい…マジで大丈夫か?」
晶が冷や汗をかきながら言うと、水鶴は薄く笑って言った。
「心の準備は出来ていないが…別にそれによって影響されるものは何もない。大丈夫だ」
「そっか。まぁ、何かあったら俺が護ってやるから、安心しとけ!」
「はは…お言葉に甘えておこう」
――ギィイ…
重い扉を、晶が開ける。
部屋の奥の玉座に、理一が座っていた。
「やぁ…来ると思ってたよ。水鶴に、皆神の少年…」
理一の言葉と共に、どこからともなく、自神の兵たちが武器を持って現れた。
「な、に…!?」
晶たちが戸惑う中……。
――バタ…ン…
開けた扉が、閉まった。