｢どうしたの？｣
ザックはミーナの異変に気付いて、心配そうに声を掛けた。
｢ん？なあに？｣
ミーナは瞬時に元の表情に戻ると、首を傾げた。
｢…いや、何でも…｣
ここに来てからの三日間で彼女がこういう反応を見せたのは一度や二度では無かった。
―何かあったのかな…？
ザックは頭を掻きながら、小さく首を横に振った。
机の上に脱いだローブを置いて、メディナは濡れた髪をタオルで拭いた。
―さすがに国家犯罪。情報提供の薄さは折り紙つきね。
彼女は小さく笑いながら、ベッドの上に腰を下ろした。
｢それでも、何とかいけそうだわ｣
ポツリと呟いて、腰に提げた剣をベッドの上に置いた。
彼女のいる場所は王都の東にあるペルモの町の安宿であった。
―王都の宿は高いと聞いていたけど、あれほどとはね。
メディナは眉間にしわを寄せながら、一つ小さくため息を吐いた。
―まあいいわ。後は彼女の行動をなぞって、逃走ルートや宝物の情報ルートを調べる事…。
｢しかしまあ…厄介ね、今回の依頼は｣
彼女は頭を掻いて、ベッドに寝転がった。
―頭のいい人物がバックについているか、或いは彼女自身が切れ者なのか…。
｢どちらにせよ、私たち賞金稼ぎは捕まえる事しかできないのだけどね…｣
虚ろな目で天井を見つめた後、窓に当たる雨粒の音を子守歌代わりに聞きながら、彼女は静かに目を閉じた。
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