「な、な、何で…!?
さっき話した自神の兵まで攻撃体勢なんだよ!?」
晶の疑問。
何故、先程 水鶴にもう戦わなくてよいと言われて喜んでいた兵たちまでもが、自分達を囲っているのか?
「……父上。人質をお取りになったでしょう?」
水鶴が、キッと鋭い目線を理一に送り、言う。
「ふふ…。いい読みだよ、水鶴」
剣や銃を構える兵の後ろには…
兵の親兄弟、子供までもが人質として捕らえられ、心臓の辺りに何かしらの機械が取りつけられていた。
「…その人たちに何しやがった、自神の教祖!!」
晶が今にも理一に襲いかかりそうな目で、問いかけた。
「あぁ、呼び方は中村で構わないよ。
…なに、そこまで心配することはない。
私の手元のスイッチを押せば、人質たちの胸の爆弾が爆発するだけだよ」
言いながら、理一は手元のスイッチらしきものをプラプラと見せつける。
「…ッ!」
水鶴が刀を抜こうとしたとき、晶がそれを制止した。
「晶、何故!?」
「落ち着け水鶴!ヘタな真似したら、中村が爆発させかねねぇ…」
自分自身、抑えきれない怒りを心に宿しながらも、晶は冷静に言った。
「そう。そこの人質たちの命が惜しいなら…おとなしく殺されればいい話だろう?水鶴、少年」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、理一が言った。
「お願い致します…水鶴様。我々に殺されてください…」
ポツリと、兵の一人が言った。
「でなければ私の女房が…爆発してしまう…」
もう一人、呟く。
「俺の子供もッ…!!」
「私の弟だって…!!」
初めは小さかった呟きが、段々と大きくなっていく。
「頼む、代わりに死んでください!」
「人数の差を考えれば一目瞭然でしょう!?」
「あなたたち二人と、家族全員…!!どっちが優先かわかりますよね…!?」
「死んでくれ、お願いだ!」
「黙って殺されてくれれば それでいいから!!」
「大体アンタ達が来なけりゃ、こんな事には ならなかったんだ!」
「アンタらのせいじゃないか!!」
「死ね!!殺してやる!」
兵たちの吐く言葉は、段々 ただの憎しみの声に変わっていく。
「! 晶…!?」
水鶴がふと振り返ると…
「……ふざけんじゃ…ねェぞ…」
今までに見たことの無いような形相をした晶がいた。