子供のセカイ。164

アンヌ  2010-04-24投稿
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耕太は混乱しながら、しどろもどろに呟いた。
「あれ…俺たち、何で……?ここはさっき……、いや、確か覇王がいて――、」
「……また時間を戻したのね、ミルバ。」
苦しげに呼吸しながらも、きぱりと放たれた美香の言葉に、耕太は驚いて美香を振り返った。
美香はざわざわする胸を押さえながら、先頭で同様に立ち止まっているミルバの小さな背中を見つめた。妙な気分だった。耕太が戸惑うのも無理はない。実際、美香も未だに実感が湧かなかった。
しかしこの状況は、数時間前に夜羽部隊から逃れた時の状況と、あまりにも似すぎている。さっきまでいた、そしてすでに「あり得ない未来」となってしまった時間の記憶が、今この瞬間の記憶と複雑に絡み合い、混ざりあっていた。美香は目眩を覚えて、額に手を当てた。
ミルバは背を向けたまま言った。
「私だって、時間を狂わせたいわけじゃない。だけど仕方ないだろう。ああしなければ、私達は殺されていたんだ。」
ミルバは大きく息を吐くと、「まさかあんなところに覇王が待ち構えているとは……」と、忌々しそうに呟いた。万能に見えるミルバにさえも、あの突然の覇王の出現は予想外だったらしい。
すると、耕太が不審げな声を上げた。
「でも、お前はすごく強いんだろ?それでも絶対に覇王には敵わないのか?」
「舞子がいる限りは、ね。」
振り返ったミルバは、皮肉な笑みを浮かべていた。耕太はその意味を計りかねている様子だったが、美香にはすぐに理解できた。
舞子は媒体を必要とせず、あらゆる想像を可能にする。それは無制限で、天地の理のように絶対的なものだ。例えば舞子が、「覇王が誰にも負けないようになる」ところを想像すれば、その通りになってしまうほどの力だった。
美香は、他に気になっていることを尋ねた。
「私達は、さっき起こった出来事を覚えているわ。覇王や他の“子供のセカイ”に住んでいる人達はどうなるの?やっぱり何か違和感を感じたりするものなの?」
「いい質問だ。君は覇王が時間が戻るのを察知して、私達を探しに来ないかということを気にしているんだろう?」
ミルバは珍しく余裕のない表情で言葉を繋げた。
「だけどその心配はない。時間が戻ったことを知るのは、私と、私が思い描いた者達――つまり、君達だけだ。」
それを聞いて、美香はひとまず肩の力を抜いた。



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