alone 68=頬に涙を=

兼古 朝知  2010-04-25投稿
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「父上の処刑の執行を引き受けろ?あぁいいよ」

「えぇッ??」

あっさりすぎる水鶴の返答に、晶は思わず間抜けな声を出した。

「大方、私が本当に自神を裏切り皆神に帰順するか試す…といったところだろう?」

「お、おう。勘の鋭い奴だなぁ、お前…」

晶が頭の後ろを掻いて言うと、水鶴は微笑した。

「で、でも…本当に大丈夫か?無理すんなよ」

心配そうに尋ねる晶に、水鶴はフンと鼻をならして答える。

「無理をする必要はない。首を切ればいいんだろう」

「そりゃそうだけど…」

晶が口ごもると、水鶴は溜め息をついて言う。

「ハァ…。心配無用だ、晶。だからそんな顔をするな」

「そんな顔ってどんな顔だよ?」

「…そんな顔だ」


こうして、理一の死刑執行は、水鶴が担当することとなった。


雨の降る中、普段 晶たち皆神の兵が招集される場所に、皆神宗信者たちが全員集まった。
晶も、じっと理一と水鶴が出てくるのを待っていた。夕は その晶の隣に立っている。

「! 来たぞ」

ザワザワと辺りが騒ぐと共に、普段 軍師が指令を出す塔の上に、水鶴たちの姿が現れた。地上8メートル程の、小さな塔。


「――フーッ…」


一息ついて、水鶴が理一を見た。
理一は ただ目の先の何も無い景色を見つめている。

――ヒュン

風を斬る音が鳴り、理一の首筋に刀が寸どめされた。

「…最期に…言いたいことは ありませんか」

水鶴が言うと、理一はチラリと下を向いた。
その目線の先には、晶。

「…少年。
あの時は答えなかったが…私にも、大切な人くらいいたさ…」

理一はハッキリとは聞き取れない大きさの声で言ったが、晶には届いていた。

「…その人は、死んだのか?」

晶の問いに、理一は微笑して答える。

「いるじゃないか。
……私の、隣に…」

理一は水鶴を見た。
水鶴は刀を理一に向けたまま、目を見開いた。

「ちち、ぅ え…?」

「水鶴、
許さなくてもいいよ。
こんな愚鈍な父など…
忘れてしまいなさい」



――ズパッ!!



水鶴は、

理一の首を斬った。




頬に涙を伝わせて。







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