「父上の処刑の執行を引き受けろ?あぁいいよ」
「えぇッ??」
あっさりすぎる水鶴の返答に、晶は思わず間抜けな声を出した。
「大方、私が本当に自神を裏切り皆神に帰順するか試す…といったところだろう?」
「お、おう。勘の鋭い奴だなぁ、お前…」
晶が頭の後ろを掻いて言うと、水鶴は微笑した。
「で、でも…本当に大丈夫か?無理すんなよ」
心配そうに尋ねる晶に、水鶴はフンと鼻をならして答える。
「無理をする必要はない。首を切ればいいんだろう」
「そりゃそうだけど…」
晶が口ごもると、水鶴は溜め息をついて言う。
「ハァ…。心配無用だ、晶。だからそんな顔をするな」
「そんな顔ってどんな顔だよ?」
「…そんな顔だ」
こうして、理一の死刑執行は、水鶴が担当することとなった。
雨の降る中、普段 晶たち皆神の兵が招集される場所に、皆神宗信者たちが全員集まった。
晶も、じっと理一と水鶴が出てくるのを待っていた。夕は その晶の隣に立っている。
「! 来たぞ」
ザワザワと辺りが騒ぐと共に、普段 軍師が指令を出す塔の上に、水鶴たちの姿が現れた。地上8メートル程の、小さな塔。
「――フーッ…」
一息ついて、水鶴が理一を見た。
理一は ただ目の先の何も無い景色を見つめている。
――ヒュン
風を斬る音が鳴り、理一の首筋に刀が寸どめされた。
「…最期に…言いたいことは ありませんか」
水鶴が言うと、理一はチラリと下を向いた。
その目線の先には、晶。
「…少年。
あの時は答えなかったが…私にも、大切な人くらいいたさ…」
理一はハッキリとは聞き取れない大きさの声で言ったが、晶には届いていた。
「…その人は、死んだのか?」
晶の問いに、理一は微笑して答える。
「いるじゃないか。
……私の、隣に…」
理一は水鶴を見た。
水鶴は刀を理一に向けたまま、目を見開いた。
「ちち、ぅ え…?」
「水鶴、
許さなくてもいいよ。
こんな愚鈍な父など…
忘れてしまいなさい」
――ズパッ!!
水鶴は、
理一の首を斬った。
頬に涙を伝わせて。