マーチンは地図上のダミス山に目印をつけながら説明した。
「で?いつ奴らを襲撃するんだ?兄貴」
一人の男が地図を見ながらニヤニヤと笑って、言った。
「未定だ。クリスタルを運び出す日がまだ分かっていないからな。…まあ、保養所が完成した後になるだろうが…」
「…と、いう事です。宜しいですかな?コッペル様」
マーチンはコッペルと呼んだ男をチラリと見た。その目には微かに侮蔑の色が透けて見える。
「そうか…なら、やる日が来たら呼んでくれよ。じゃあな」
コッペルはその眼差しを気にした様子も無く、剣を腰に提げて部屋から出て行った。
「また酒を飲みに行ったのか…困った弟だ」
スレイは一つ小さく息を吐いて、頭を掻いた。
―スレイ様は、コッペル様には甘い。
マーチンはそう思いながら、スレイに目を向けた。
―たった一人の肉親、という事で多目に見ているが、もしも何か失態を犯してメドゥナ家を窮地に陥れた場合は…。
彼は腰に提げた剣に目をやった。
―この私が、やるしかあるまい。
彼は悲壮な覚悟を胸中に納め、
「それでは引き続き奴らの動向を探って参ります」
と、言いながら恭しく頭を下げた。
「頼むぞ」
スレイは小さく笑って、頷いた。
「は…」
マーチンはもう一度恭しく頭を下げると、静かに部屋から出て行った。
何の収穫も無いまま戻ったザックとミーナはダリルたちの報告を聞いて、一斉に安堵の表情を浮かべた。