――長い、
長い戦争は終結した。
それから三ヶ月後…。
「水鶴ーッ!」
「! 夕!!」
夕が水鶴に駆け寄る。
水鶴は夕に笑顔を見せた。
「そろそろ店番の時間だよ!行こう!!」
「わかった。花を供えたらすぐ行く」
「あ、そっか!じゃあ先に行ってるね!!」
夕は 去っていった。
あれから、唯一の同年代の同性ということで、夕と水鶴は仲良くなった。
現在、水鶴は夕の家に住まわせて貰い、樋口家の店番をするようになっている。
そして、店番以外の水鶴の日課。
それは圭の墓に、花を供える事だった。
「柊…私は無事だ。
私が無事ならばお前は…
幸せだと言ったな…。
お前を不幸になど させんからな、柊…」
水鶴は笑って、墓をあとにした。
供えた花はゆらゆらと、風に吹かれ 揺れていた。
「あ、水鶴 今から店番か?」
途中で会った晶が話しかける。
「あぁ。…楽しいな、商売は」
「ははッ!そっか、そりゃよかった」
晶が そう言って去ろうとしたとき、
「…晶!」
水鶴が呼び止めた。
「ん?どーかした?」
「その…なんだ」
「何モジモジしてんだ?
らしくねーな」
「…だから、その……
…ありがとう」
「はぇ?」
驚いたせいで間抜けな声で聞き返す晶。
「お前には、まだ言ってないと思って」
そんなことを言うために呼び止めたのかと、水鶴は晶に馬鹿にされるかと思ったが、晶の返事は予想を覆した。
「…よく言ったじゃん、水鶴!
俺こそサンキュな!!」
グッと親指をたて、晶は太陽のような笑顔で言った。
また歩きだした水鶴の背を見送り、晶は早歩きで帰っていった。
もう誰も“独りきり”じゃない。
心の支えがない人はいない。
晶も、
夕も、
水鶴も、
圭も、
もう
“独りきり”じゃない。
Don't cry.
You are not alone.
alone 終