ヒビキ
『そういえば、まだ自己紹介してなかったね。
私、ヒビキ・アリーシャ。
よろしくね、琴葉』
琴葉
「うん、よろしく。ヒビキさん」
後ろでヒビキが琴葉にあいさつをしていた。
たしかに琴葉はヒビキの存在には、気付いていたけど話すのを見るのは初めてだった。
僕たちは一通り回った後、姫野を探していた時に見つけた地下室へとやってきた。
ヒビキ
『ここって姫野さんを捜しているときに見つけた地下室だよね?』
とヒビキは言ったが……。
達也
「うん、ちょっと気になることがあってさ」
そう言うと僕は狭くて急な階段を下りると電球が照らす薄暗い地下室に入った。
石造りの床にはワインの瓶の破片が辺りに散らばっていた。
以前、ここはワインセラーだったのだろう。
ワインセラーの奥にはワインを入れていたと思われる樽が三つ並んでいた。
僕は、その三つの樽を順番に叩いていった。
すると壁側にある樽は、他の樽より音が違った。
どうやらこの樽には中身が空みたいだ。
達也
「これだな……」
そう言うと僕は、その樽を退かして壁を叩いてみると一カ所だけ僅かに段差があった。
達也
「見つけた!」
ヒビキと琴葉が慌てて駆け寄って来た。
ヒビキ
『これって……隠し扉?』
琴葉
「ヘェ〜凄い。少し見直しちゃった」
み、見直されたんだ。
まぁ……いいけど。
と思いつつ僕は隠し扉を押してみた。
達也
「びくともしない。ということは引き戸かな?」
そう思って隠し扉を横にスライドすると、扉は開いた。
そこには人が一人くぐり抜けられそうな穴が口を開いていた。
ヒビキ
『これは……隠し…通路だね』
琴葉
「でもどこに通じているんだろう?」
達也
「判らないけど今、入るのはやめておこうか」
そう言うと僕は、あらかじめ用意していた細い糸を通路にピンと張った。
琴葉
「それは?」
達也
「多分、この抜け道を知っているのは犯人と僕たちだけだ。
だからもし犯人が通れば糸が切れるってこと」
琴葉は‘なるほど,という顔をして頷いた。
そして細工を終えると樽を元の場所に戻し、ワインセラーを後にした。