僅かな時間ではあったが、ノアは半次郎と行動をともにしたことで、その人となりを把握していた。
その性格は素直にして実直、それゆえに人の教えを虚心坦懐に聞き入れることができ、それを会得するための努力を惜しむことがなかった。
それこそが半次郎の生まれ付き持つ、最大の素質であるとノアは洞察していた。
そして今、瞬く間に気を同調させた半次郎に、ノアは半ば呆れていた。
彼女は気の同調という厄介な技術の取得に、十年以上の歳月を要した。
それを、気の発動から一月もたたぬ内に、半次郎は自分のものとしてしまったのだから、その反応も無理はない。
静かに剣を構えるノア。
その動きを鏡に写したように、半次郎も動いていた。
次の瞬間、硬い岩盤質の地表を二つの閃光が貫いた。
一瞬の静寂が場を支配した後、激しい地響きをともなって岩盤は裂け、なだれをうって洞穴の奥底へと崩れ落ちていく。
半次郎は手にする剣を見つめ、驚きを隠せずにいた。
軽さも然る事ながら、その強度と破壊力の高さは比類なき逸品であった。
それはノアから貸し与えられたシャンバラの剣であり、彼女がつかう剣と同じ仕様のものだった。
さらに半次郎を驚かせたのは、その剣が大量生産された剣であり、特別な物ではないという事実であった。