家に着いた。
少し辺りが薄暗くなってきていた。
薄暗さと雨で、家はいっそう暗く見える。
「ここか?」
「はい。」
扉を開け、中に入って行く。
「お邪魔しま〜す。って、なんだこりゃ!?」
家の中は散らかって、いや、明らかに荒らされていた。
写真立てやら花瓶が割れている。
「とりあえず、警察に連絡」「無駄です。」
「はぁ?無駄って。んなことないだろ。」
「もう一週間も前に来てもらいましたから。」
「なんで、片付けないんだ?」
ノックさんが一瞬言葉につまりながら言った。
「何事もなかったかのようになるのが、怖いんです。ここに居て耐える自信もないけど、片付けて、何事もなかったかのように見えるようになるのが無茶苦茶怖い。」
「これが、伊島さんの言ってたお前のズレの原因か?」
ノックさんが真剣な目で聞いてきた。
「そうなんでしょうね。僕は最近まで平凡な人生を歩んでたんですけど、それもすぐには戻れそうにないようです。」
「なぁ。聞くべきじゃないかもしれないけど、何があったんだ?ここで。」
僕は話すべきかためらった。
でも、話すことに決めた。もし話す気が少しもないなら無理を言ってでも手伝いを断るはずだから。
一呼吸を置いて、僕は話した。
「一週間前、ここで母さんと妹が殺されたんです。」