「よぉし、早速俺の出番だな!」
ダリルは勢いよく椅子から立ち上がると、腰に提げた自分の剣に手を伸ばした。
「ダリル、真剣じゃなくて木剣でやりなさい」
リリアは呆れたような顔で、ダリルに注意した。
「おっと、危ない危ない」
ダリルは頭を掻いて、小屋の壁に立てかけられた木剣を手に取った。
「ほらよ」
「…ありがとう」
ザックは不安そうな表情で、手渡された木剣を見つめた。
「心配いりませんよ。普通に日頃の訓練で得た力を出せばいいんですから」
エナンはザックの肩を軽く叩いた。
「はあ…」
ザックはまだ不安そうな表情で小さく頷いた。
「リリアが見られるように小屋の裏手でやろう」
ダリルはそう言って、ザックを小屋の裏手に出るように促した。
小屋の裏手は林になっており、人目につく心配は無かった。
木々に生い茂る草はまだ小さく、青々とした葉になるにはもう少しかかると思われた。
ザックは木剣を持ちながら、それらの景色に目をやった。
「どうした?」
ダリルはそれを見て、不思議そうな顔をした。
「彼女の教えの一つ『剣を取って対峙する時はまず周りの景色を見て、その後相手を観察せよ』かな」
「へえ…」
「ふむ…」
「すごい…」
「すげえな…」
ダリル、リリア、ミーナ、エナンの四人はその言葉を聞いて感心したように何度も頷いた。
「お前はその人に剣を教わったんだな?」
「短い間だったけどね」
「そうか…なら…」
ダリルは静かに剣を構えて、
「ちいっとばかり、本気でやるぜ」
と、言い放って、ザックとの間合いを一気に詰めた。