「つばさあー!」
扉の前で叫ぶ。すると出てきたのは歯ブラシ食わえた翼。
「わふい、あほじゅっふんまっふぇ!!(後10分待って)」
「ああ?!」
「わー!!こふんえふまひまふ!(5分で済まします)」
慌てて家の中へ戻る翼。
こんな毎朝がもう何年も続いてる。
「あほ」と言えば「ばか」と返ってくる。
そんな関係が恋仲に発展するわけもなく、ずっと進まない。
別に今さらいいけど、この状態が好きなんやけど、でもなんかもどかしい。
そんなんだから、この前みたいな伸昭だとか、ああいう奴に会うとやっぱりこういうのが恋なんじゃないかなって思いたくなる。あんな幼なじみじゃなくて、もっとちゃんと…
たとえ義理だとしてもあいつにバレンタインにお菓子なんか渡せるわけない。
あいつが素直に答えるとは思えんし、絶対なんか言うに決まってる。
それなのに、この世話好きな女子3人組のせいで、今年初めて、バレンタインというものに挑戦させられることになってしまった。